忘れえない「滝あび」場
二〇〇八年八月のある日、一軍部隊を訪れた
流れをせき止めて谷間に積み上げたダムからは白いしぶきを上げて水が流れ落ちていた。
中隊では軍人たちが訓練の合間に水を浴びることができるように「滝あび」場を設けていた。
そのことを聞いた総書記は、今のように暑い夏に軍人たちがここに来て水浴びをすれば喜ぶはずだ、ダムからあふれでる水を効果的に利用していると賞賛した。
総書記は灌水浴場が気に入ったと言ってこうたずねた。
「魚はいるのかね」
「いません。これから魚を入れて飼うことにします」
「いや、軍人たちがきれいな水を浴びられるように絶対にそうしてはいけない」
水浴びをしてさっぱりした気分になる兵士たちを思い描くように立ち尽くす総書記の襟首は、汗でぐっしょりぬれていた。
真夏の蒸し暑さ、照りつける太陽のもと大地を熱く焦がしそよ風もなく、樹々の葉もしなび、鳥も水辺に寄って涼むという暑さの中で、休むひまもなく現地指導の道を歩み続ける総書記の労苦はいかばかりであろうか。
中隊を後ろにした総書記はその心境を打ち明けるのであった。
― 今も「ドロノキ」中隊の「滝あび」場がありありと目に浮かぶ。全身汗みずくになって水しぶきを上げて流れ落ちる「滝あび」場を見ると、今にも飛び込んでみたい気持ちにかられた……
しかしその時、総書記は現地指導のため次の目的地へ向かっていた。