長老の不届き

 

一九三六年の夏、白頭山地区のとある林業村に朝鮮人民革命軍の主力部隊が立ち寄った。

伐採所の労働者たちは、金日成将軍に会えるものと思って欣喜雀躍した。

ところが、遊撃隊員はみながみな同じ軍服を着ているので、誰が将軍なのか見分けがつかなかった。

「一体どなたが将軍様なんです?」

遠目なりとも金日成将軍に一度お目にかかりたい、という切実な願いを抱いて人々は口々にたずねたが、答えてくれる者はいなかった。

そんなとき、村の長老格の年老いた労働者がさも自信ありげに言った。

金日成将軍様は縮地の術を使う天下の名将なのだから、多分年からしても、風格からしても普通の兵士とは違うはずだ。だから、身なりの違うお方を探せば間違いなく将軍様であろう」

いかにももっともらしい話だった。

労働者たちは身なりの際立った遊撃隊員を探そうと、あちこち走り回った。

だが、いくら探し回っても、そのような隊員は見当たらなかった。

それでも、そのなかにどことなく他と違って見える人が一人いるにはいた。

労働者たちは、もしやその人が将軍様でなかろうかとささやき合った。

だが、長老は一向に取り合おうともしなかった。

「馬鹿を言うのもほどほどにしろ。あの人は隊員の食事をまかなう事務長だぞ。わたしは食事の準備で一緒に出かけたのでよく知っている。それに考えても見ろ。いくらなんでも、将軍様があんな身なりをしているはずはない」

労働者たちは、長老の「訓示」を聞いてまた四方八方探し回った。だが、部隊が村をたつ寸前までとうとう探すことはできなかった。ことここに至って、労働者たちは「事務長」に聞いてみようと長老をそそのかした。

長老も最後の機会を逃してしまいそうなので、仕方なく「事務長」をつかまえて熱心に頼み込んだ。

「事務長さん、村民はみんな金日成将軍様にお目にかかりたがっているのですから、どなたが将軍様なのかちょっと教えてくださいな」

ところが「事務長」はなぜか、返答を避けてほほえむだけだった。すると、隊員のなかからにわかに爆笑が沸き起こった。

長老は訳が分からず、おろおろするのみだった。

「事務長」が彼に近寄って親しげに言葉をかけた。

「私たちは日本帝国主義と戦う朝鮮人民革命軍です。だから、将軍もみんなと一緒に近いところにいるはずです」

「えっ?近いところにですと?すると、将軍様はこの村に来られなかったというのですか?」

長老はそう言うと、肩を落としてその場にへなへなと座り込んでしまった。

これを見た部隊の給養担当官が老人を抱き起こして言った。

金日成将軍はいま、あなたの前におられます」

彼はびっくりして目を凝らした。

目の前で明るく笑っているのは、質素な身なりの「事務長」その人だった。

長老は「将軍様!」とのどをつまらせて膝を折った。

「私の不届きをお許しください。人を見る目がなく、つい事務長だとばかり思っていました」

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