朝鮮の三十八度線(56)
第四章 三十八度線を政治的分断線に凝結させた冷戦
第二次世界大戦は世界反ファッショ勢力の歴史的勝利によって終わり、世界構造を根本的に変えた。
ヨーロッパとアジアに出現した社会主義諸国は、一つの陣営を形成し資本主義勢力と対峙した。アジア、アフリカ、ラテンアメリカにおける植民地民族解放運動の高まりは帝国主義植民地体制の全面的崩壊過程を促した。第二次世界大戦の過程で帝国主義体制内にも深刻な変化が生じ、主要帝国主義諸国の並列的存在は終わりを告げた。戦敗国のドイツ、日本、イタリアは戦前の政治的・経済的・軍事的地位をいっさい失い、イギリスはヒトラー・ドイツの打撃を受けて甚大な損失をこうむり、世界「最強国」の地位を維持できなくなった。強力な陸軍の存在を誇るフランスも大戦初期ドイツに国を占領されて衰退した。ところがひとりアメリカだけが戦火を免れ急速な経済的成長を遂げて巨大な戦時利潤を獲得し、大戦末期には資本主義世界における工業生産の半ば、金保有量の七五・五%を占めて、資本主義世界の超大国にのしあがったのである。こうして資本主義体制はアメリカを首位に主従関係をもって再編されることになった。
アメリカを中心に再編された資本主義は、新たに出現した社会主義体制の存在自体を資本の生存空間にたいする脅威として敵視し、政治的、経済的に封じこめようとした。社会主義諸国は「新世界秩序」の樹立をめざすアメリカの戦略が社会主義の圧殺をはかるものとみなして、資本主義と張りあい、ここに「冷たい戦争」がはじまったのである。
アメリカはドルと原子爆弾を切り礼にして世界戦略の遂行をはかり、ヨーロッパではドイツを、アジアでは朝鮮を基本的な舞台にして対決を激化させ、情勢を極度に先鋭化させていった。
アメリカは戦後、朝鮮をアジア進出の橋頭堡にすべく、朝鮮を分断させる道へと進んだ。
朝鮮が北緯三十八度線を境界に分断された不幸な過程の背景には、米ソの相克があったのである。