烈士たちを忘れてはならない

一九九八年九月のある日のことである。

前線視察の帰路、金正日総書記は平壌の近郊にある愛国烈士陵を訪ねた。

烈士たちの石造写真を順々に見ていた総書記は、「ここに来ると忘れられない人たちにみな会える!みな生きているようだ。石造写真はよく出来ています」と大いに満足した。

そして、きょうは時間がかかっても烈士たちの顔をみな見ていこうと言い、段段になっている烈士陵の墓を一つひとつ見て回った。

ある烈士の石造写真を見ては、この人は革命武力の強化発展に大いに寄与したと述べ、ある烈士の石造写真を見ては、この人は首都建設をはじめ国の建設事業に大きな功労があったと評価し、あたかも彼ら一人一人と心の中で言葉を交わしているかのように石造写真に見入った。

党と革命に限りなく忠実な同志たちだった、働き盛りにあまりにも早く他界してしまったと思うと本当に胸が痛むと声をかすらせる総書記を見て、随員たちは熱いものを呑み込んだ。

多くの石造写真を一つひとつ見て回っているうちに、いつしか夕闇が迫った。

しかし総書記は引き続き墓を見て回った。

車のヘッドライトで照らさせて最後の墓まで見て回り、段段をおりていた総書記はふと立ち止まり、残念そうに言った。

「きょう愛国烈士陵を見て回ったところ、もれた人が何人かいるようです。党と領袖のために誉れ高い生涯を送った烈士たちをみな愛国烈士陵に安置すべきです」

そして、だれだれも最後まで革命に忠実であった、彼らをみなここに安置して石造写真もつくってあげよう、祖国の統一・独立と社会主義建設における彼らの偉勲をわが党と人民は永久に忘れないだろうと語った。

烈士陵から帰った総書記は、今回烈士たちの石造写真をつけたので陵がすっかり様変わりしたと満面に笑みを浮かべた。

そして幹部たちに、「君たちもみな行ってみただろう?」と聞いた。

「あのう、実は時間を割くことができず……」と彼らが言いよどむと、総書記は顔をくもらせた。

そして、愛国烈士陵に石造写真をつけたことを知っていながら、まだ行っていないのを見ると、君たちに革命的信義と同志愛が足りないようだ、われわれはつねに、祖国の解放と社会主義建設、国の統一偉業のためにたたかって倒れた愛国烈士たちを忘れてはならないとして、次のように言葉を継いだ。

―朝鮮の革命家は革命的信義を命より重んじる真の人間だ。この気高い道徳的信義にもとづいてわれわれの一心団結がもたらされ、朝鮮革命の誇りに満ちた歴史が創造されたのだ。金日成同志が築いた革命的信義の伝統をりっぱに継承し発展させているがゆえに、わが党が強く、朝鮮革命は必勝不敗なのだ……

恐縮している幹部たちに総書記はこう言った。

「みな愛国烈士陵に行きなさい。君たちが行けば先に逝った同志たちがどんなに喜ぶことでしょう」

 

 

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