生まれる前につけられた名前
二〇〇〇年三月二一日、
「将軍さま、まだわたしたちの親も来ていないのに、将軍さまが先に訪ねてくださりました。本当にありがとうございます……」
感極まって挨拶する除隊軍人の夫婦に、総書記は、除隊軍人の新婚所帯にわたしが一番先に来たのはよかった、いつ結婚したのかと聞いた。
夫がてれて返答しかねていると、郡の幹部が、妻は平壌から娘時代に大紅丹にやってきた女性であり、昨年の建軍デー(四月二五日)に結婚し、今は身ごもっていると話した。
それはおめでたい話だと言って、総書記はまた除隊軍人の妻に問いかけた。
「それで出産する月はいつなのかね」
「七月です」
「男の子を生めるだろう」
「必ず男の子を生みます」
親しみのこもった質問と闊達な返答。
父親と娘の間に交わされるようなこだわりのない問答だった。
男の子か女の子かも分からず、必ず男の子を生むという彼女の言葉を聞いてみんなが笑った。
総書記も大笑いした。
ところが急に彼女が総書記に何事かをささやいた。
笑い声が止まず総書記が聞き分けらずにいると、彼女は総書記の腕にすがってまた繰り返した。
「将軍さま、赤ちゃんに名前をつけてください」
あまりにもおこがましい願い事に一同の顔から笑いが消えた。
けれども総書記はいささかも意に介せず楽しげに言った。
「先に名前をつけようというのだね」
そしてまだ男の子か女の子かも分からないのに名前のつけようがない、あとで名前をつけてあげようと約束した。
その日の晩、総書記は除隊軍人の家庭に立ち寄ったことを幹部たちに想起させ、もともと子どもの名前は父親がつけるものだが、除隊軍人の妻のたっての所望だから、彼らの未来を祝福する意味でわれわれが名前をつけてあげようと言うのだった。
「男の子を生めば大紅(テホン)、女の子を生めば紅丹(ホンダン)とするのがよさそうだ」
実に意味深い名前だった。
二つの名前を合わせれば彼ら夫婦が総書記の意を体してジャガイモ栽培で革新を起こすため進出した「大紅丹」になるのである。
その後、その除隊軍人の家庭では「紅丹」が生まれた。