チョンガー作男の縁談
抗日武装闘争の時期、金日成将軍が長白地区に進出して活動していたときのことだ。10数戸しかない吉城村という小さな村に滞留していた将軍は、ひょんなことから金月容というチョンガーの作男と知り合った。
人柄は実直そのものだが、作男の身の上なので娘を嫁にくれる人はなく、30を過ぎても結婚できずにいた。
ふしくれだった手、見るにしのびない身なり……。
その日の晩、彼の身上を思いつつ一夜を明かした将軍は、村をたつ前に宿泊した家の張老人に頼みごとをした。
「おじいさん、ご迷惑かもしれませんが、頼みごとが一つあります。昨夜私は、金月容の行く末を案じて眠れませんでした。村のお年寄りたちが相談して適当な相手を見つけ、婚礼も挙げてやってはいかがでしょう」
「将軍様にそんなご心配までおかけして、申し訳ありません。相談したうえで、なんとかして結婚させますからご安心ください」
村の老人たちは約束を守った。作男の金月容は良い相手を紹介され、結婚することになった。娘を嫁がせたのは、十八道溝寺谷に住む金老人だった。将軍が心配される人なら娘を嫁にやってもいいと言って、吉城村に来て縁談をまとめたのだった。
その知らせを聞いた将軍は給養担当副官に、戦利品のなかから良質の布地と食料品を選んで吉城村に送り届けるよう指示した。
「将軍、どうしても贈り物をしなければならないのですか」
副官の意外な問いかけだった。
「もちろんだ。気のりがしないのかね?」
「正直言って、贈りたい気持ちにはなれません。一生に一度の結婚式を盛り切りの飯ですませ、戦場に散っていった戦友たちが思い出されて……」
将軍は彼の心中を理解した。
「それを考えれば、私とて胸が痛む。だが君、われわれが盛り切りの飯で結婚式を済ませているからといって、人民もそうしなければならないというほうはないだろう。……民族再生の一念に燃えて銃を執った朝鮮の青年たるものが、金月容一人の結婚式ぐらい準備してやれないというのか」
副官は、その日のうちに贈り物を用意して吉城村に届けた。
この話はまたたくまに西間島一帯に伝わった。
あくる年の5月下旬。祖国の地・普天堡への進軍を間近に控えたある日、再び吉城村を訪ねた