主体107(2018) 9月 26日

早朝の電話

 

一九八〇年六月のある早朝、夜遅く事務室で仕事をしていた幹部が、机にうつぶしてつい寝入ってしまった。

どのくらい時間がたったろうか。夢うつつに電話のベルの音を聞いて目を覚ましたかれは、急いで受話器を取った。交換手の明るい声が響いた。

書記がお呼びです。すぐつなぎます」

姿勢を正して立ちあがったかれは、総書記の執務室に電話がつながると、すぐ声をかけた。

「電話をお受けします」

ところが、先方からはなんの応答もなかった。一秒また一秒と時間は流れていったが、総書記の声は聞こえず、感度のよい受話器からは、総書記の息づかいが規則正しく聞こえてくるばかりだった。

一瞬、かれは胸がじーんと熱くなった。総書記は受話器を手に取ったまま眠っているのだった。

かれは自分の息づかいが受話器を伝わって、総書記の眠りを妨げてはと、息を殺して立っていた。それから十五分ほどして、受話器から総書記の声が響いた。

「あ、すみません。つい居眠りしちゃって」

総書記の声には疲労の色が強くただよっていた。

かれは声をふるわした。

「こんなに遅くまで毎晩お休みにならないと、お体にさわります」

「あ、またそのことか」

しばらく間を置いて、総書記はすまなさそうに語をついだ。

「遅いので夜が明けたら相談しようと思ったのだが、みなさんが提出した書類を見て思いついたことがあったので、早速電話をかけたのだが、諒解してください」

かれは喉がつかえ、黙然と総書記の言葉を聞いていた。涙をたたえた目がその心情を語っていた。

感想文
Change the CAPTCHA codeSpeak the CAPTCHA code
 

Copyright © 2003 - 2018 《Korea Ryugilo Editorial Bureau》

All Rights Reserved